心の器の大きさ 後編

昨日の続きです。

もう何年も前の話です。3学期に入った頃だったでしょうか。中1生の親から電話がありました。受話器をとって会話を始めた途端、話すお母様...

「こんな点数なら塾に来なくてもとれますよねぇ?」なんて2度もおっしゃったお母様。

この時点でこれから一緒に協力をして子供の成績を上げるパートナーとしてではなく、消化できない想いをぶつける相手として私と話している印象を受けました。

売り言葉に買い言葉。言おうか言わまいか迷った挙句、決心をして私は口を開きました。

「本当に簡単に取れる点数なのかどうか、塾を離れて試されてみたらいかがですか?」

恐らくお母様が想像していた反応では無かったと思います。私は努めて冷静に話しました。

「お子さんは頑張って取り組んでいましたし、私どもも手を抜いて指導をしたつもりはありません。お母様の希望に沿う結果ではないかもしれませんが、取ってきている点数は一緒に力を併せたからこその点数であると私は思っています」

「しかし、もしもこれが塾に通わずとも取れる点数であると思われるのでしたら、実際に試していただいた方が良いですよね」

ここからの会話はあまり覚えていません。いや、もしかしたら覚えていたくなくて意識的に忘れたのかもしれません。

冷静な対応を務めた私ですが、ここから私もお母様もだんだんとヒートアップしていって、話す声が大きくなっていったことだけは覚えています。

残念ながら、話は物別れで電話が切れる形となりました。この結末を覚悟しての反論ではありましたが、残念です。

バックヤードで電話を切って教室に戻ると、なんだか空気感が違いました。

あぁ俺のせいか。いつもニコヤカな生徒の顔が引きつっていましたね。声はバックヤードから筒抜けていたんでしょう。気を使わせて悪かったです。

お母様との電話での口論の結果、その生徒はその日の授業から来なくなる結末に。

その日、その生徒といつも一緒にいる友達が塾に来たときに声をかけにいきました。その友達は私に「あー聞いたよぉ」と気を使ってくれてか爽やかな笑顔。

対して私は最大限の苦笑で「すまんけど(あの子に)『悪かった』って伝えておいてくれんか」と言うのが精いっぱい。

塾で指導をして20年の時が過ぎましたが、お母様と大きな声で口論して気に入って通ってくれていた子がその日に退塾するだなんてことは後にも先にもこの時だけ。

本当に苦い思い出です。

心の器の大きさ

苦いこの出来事があってからしばらく経ちます。

昨年の1月、縁あって名学館の佐藤代表にお会いする機会がありました。ここのブログ記事でもレポを書きましたね。

「引越し先の学習相談のサイトについて当社の代表が興味を持ちまして、一度お会いしてよかったら食事をと申しておるのですが、いかがでしょ...

名学館は名古屋から広がった個別指導塾で全国にグループ300拠点もある学習塾です。岩倉にも駅前に教室がありますよね。

その名学館の佐藤代表と食事をご一緒させていただいたときに、開業したばかりのことを聞かせていただけました。

どんな話の流れだったか、佐藤代表の開業間もない頃の生徒のお母様からの苦情の電話の話になりました。

私は先ほど紹介した苦い経験があるので、ちょっとドキドキしながらお話を伺いました。

佐藤代表がおっしゃります。

「まずはお母さんのおっしゃる塾への不満を全て聞いて受け止めるんだよ。全部を聞いた上でお母さんと話していくことが大事だね」

「お母さんも忙しい日々でストレスが溜まっていることもあるかもしれないし、しっかりと聞くことだね」

・・・

・・

なんてことだ・・。

衝撃を受けました。大きく構えた佐藤代表の振る舞いに、そう振る舞えなかった自分自身に。

こんな風に大きく構えて、じっくりと地に足をつけてお母様と向き合って、話し合うことができたのならば、私もお母様と口論になどならなかった。

気に入って通ってくれていた子がうちの塾に通えなくなってしまうようなことも無かった。

あのときどう振る舞えばよかったのか?今もそれは明確にはわからないけど、お母様も私もその子の成績向上を願っていたことは一緒だったのだから、その部分を大切にしてじっくりとお母様の声に耳を傾けて話し合いが出来たら良かったのに・・・

生徒を保護者と込みで包み込むように接する振る舞いを聞かせていただき、佐藤代表と私の心の器の大きさの違いを嫌と言うほど感じてしまいましたね。

こうやって今ブログ記事として書いてみて改めて気が付きます。

前回の記事でキツイ言葉を放ったお母様に関して

「強い言葉を放ち相手をやり込めたら勝ち」というゲームではありません。感情のある人間の関わる事柄です。

なんて書いてみましたが、これは正にブーメラン。

お母様に正論を振りかざし反論をした私は

「正しいことを言って論破したら勝ち」というゲームではありません。塾と保護者と二人の想いを重ねて力に変えていくゲームです。

こんな言葉を噛みしめなくてはいけないですね。

繰り返してはいけないこの私の失敗の出来事を、今後に活かしていけるよう自戒込めて書いてみました。

心の器を大きくしていき、保護者も含めた多くの人の力になれるよう努力します。

今日はこのへんで。

それでは。

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國立拓治

愛知県岩倉市と兵庫県伊丹市にあるさくら個別指導学院の塾長。2005年より愛知の中学生親子の力になれるよう当ブログを日々更新。月間最大50万PV。拙著「くにたて式中学勉強法」は12刷重版!著書累計は6万5千部突破!休日は余談も発信!3度の飯より飯が好き。詳しいプロフィールはこちら。