「すいませんね、同業者が面談に来たりして。ちょっと今回の次男の高校入試、2000万円の勝負がかかっててガチなんです。根堀葉掘り聞いたりしますが、どうか宜しくお願いします!」
学習塾に勤めて20年を過ぎた俺は、その日近所の大手進学塾の面談室にいた。
塾に勤める俺がガチで我が子の塾を選ぶことになったのだ。書いたとおり2000万がかかってる。もはやこれはビジネスだ。
先日、俺の父がこう言ったのだ。
「なぁ、孫のジロウは高校入試で旭丘を目指さんのか?ワシは母校に孫が進学するのが夢なんじゃ。お前は滝に行ったし、孫のタロウは明和に進学したじゃろ」
「旭丘に進学してほしいんじゃ。同窓会で爺さん連中に自慢したいんじゃ。・・・くだらないとか言うなぁ。親孝行だと思ってつきあってくれぃ」
千鳥のノブのような口調で父が懇願してきたのだ。
「タダでとは言わんぞ。ワシの夢を叶えてくれたらお前と孫に2000万やる。なぁに、ワシは老い先短い。夢が叶えば安いもんじゃ。どうじゃ・・」
「やる!」
父の言葉尻を掴んで返事をした。家に帰りジロウに説明をすると、俺の言葉尻を掴んでジロウも「やる!」と返事を。
ジロウももともと旭丘には興味があったようだが、実力不足だったので諦めムードだった。
そんな状況のところに父のメチャクチャな提案。おかげで旭丘を目指して本気でやる「やる気スイッチ」が入った。こんなスイッチなら誰もが入るか(苦笑)
ジロウは塾に通わずやれるほど理解力と精神力は持ち合わせていない。親子で相談した結果、大手集団指導塾に入って旭丘を目指すことに。
チームプレーのスポーツが好きで友達に影響されやすい性格を踏まえ、国語力もある方なので集団指導も選択肢に選べるだろうと判断を。
さて、ここからガチの集団指導塾選びが始まる。塾歴20年を使って全力でいく。
俺がガチで塾選びに取り組んだ内容をここに残しておく。
塾に通う友人たちを確認!
勉強が得意な子たちがどこの塾に通っているかをジロウ本人に調べさせた。妻には実際に旭丘に進学した兄を持つママ友に通っていた塾と評判を聞くように指示を。
意識高く勉強する子とその家庭がその塾を選んだというところに価値がある。ここで塾を2~3塾に絞り込んだ。
いちおうネットの評判も見ておく。ただ話半分で読む。塾を選ぶ最大手サイト塾○ビとか、さくらの口コミとかあったから。俺の勤める塾で存在しない学年の評判が書き込まれていたのだ。
だから2ちゃんねるを見るぐらいの信頼度で、食べログぐらいの信頼度で見る。信頼出来るサイトもあるんだけど、匿名の口コミは話半分で聞くのがキホン。
教室の様子を確認!
絞り込んだ塾に全て面談のアポをとって、面談室に通されるまでの間、教室の様子をじっくり見た。
掲示物は四隅しっかり貼れているか、曲がってないか。雑多なものはバックヤードに隠れているか。
トイレはわざと借りた。トイレの掃除の行き届き具合とか。ここがあまりに汚いようだと選択肢から外して良い。
誰もが避けたい掃除箇所であるトイレにどれだけ心を割けているか。雇われの身で。
教室長の人柄を確認!
雇われの教室長の立場にいたからこそ、よく見える。
ただただ頭数として生徒数が増えるように頑張っているだけの人なのか、一人ひとりの成績アップに心を割いている人なのか。
2つの要素はどちらか一方だけになることはないが、もちろん「一人ひとりの成績アップ」に多く心を割いてくれている人かどうかを見定める。
教室長となってどれだけ経ったかとか、今までどんな地域の教室長をやってらっしゃったかとか、なぜ塾の先生になったのかまで聞いた。
その場の空気の色を作る教室長が塾選びで最重要だ。
面談でその校舎の実績を過去3年分ぐらい確認!
教室長の面談で、その教室の実績を過去3年分教えてもらった。どれぐらいの学力層の子がその塾に通うのかを見る。
しばらく旭丘レベルの高校の合格者がいなかったらその校舎は選択肢から外す。授業自体が少し下のレベルにピントを合わせて進められているやもしれない。
大手塾なら先生の転任で把握していないことあるやもしれないので、面談に行く前に伝えておいて調べておいてもらった。先に言っておかないとスッとは出てこない資料かもしれない。
今いる先生のメンバーはいつから校舎の担当かを確認!
実績とともに、今校舎にいる先生のメンバーはいつから担当しているかを確認。過去の校舎の合格実績が今のメンバーのものなのか、他のメンバーのものなのか、少々イヤラシイが確認をさせてもらう。
なにせ大きな勝負。そこまでしたい。
今回は中3からの塾選びなので必要ないが、中1中2からの塾選びであれば、先生の転任の頻度は確認しておく。中3で指導メンバー総変わりなんてこともありえるので。
生徒がいるときに行って雰囲気を確認!
面談は生徒がいる時間帯でお願いした。塾は生徒が来て本来の姿となる。それを確認したかった。
そこにいる先生と生徒たちとの心の距離はどれぐらいか。よそよそしくないか、冷えていないか、馴れ馴れしすぎないか。
教室の温度と空気の色を見る。集団指導塾はクラスごとで一体感を出しやすいから色は出やすい。
基本的には大手ならアットホームで暖かな雰囲気が良い。
以上。
今回の塾選びがどれだけガチかを最初に伝えて、失礼承知で根堀り葉掘り塾に質問しまくった。
3塾回ってじっくり選んだ結果、気に入った塾長がいた「佐成予備校」に頼むことにした。
「俺はあなたがいるからこの塾を選んだんです。どうかうちの息子、厳しく見てください。宜しくお願いします!」
名指しの仕事は気合入る。その自分の体験ふまえ、しっかり名指しでお願いした。ここから心配事はちょくちょくこの塾長に相談することとする。
あとはジロウの頑張り次第。爺さんの夢を叶えて我が家に財産をもたらす高校入試。
今年は熱い1年になりそうだ。
おわり
この話は全てフィクションです。
もしも私がスーパー真剣に大手集団指導塾を選ぶことになったらどんな風に選ぶかなぁというのを妄想して書きました。
今から大手集団指導塾を選ぶ参考にしていただいてもいいですが、スーパー真剣バージョンなので少々ヤリ過ぎな面もあります(゚д゚)!
「これから1年一緒に受験を過ごすパートナーを真剣に探しているんです!」という姿勢で塾の先生方と接してくださいね。
今日はこのへんで。
それでは。
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國立拓治
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