OFFです。余談を。
先月「トーチトワリング中学生火傷事故」が起こりました。この事故を受けて、トーチトワリングを中高大とやっていた私から、実体験と今後のトーチトワリングの扱いについての希望について記事を書きました。
この2つの記事で私が書いたのは「トーチトワリング、やるのも見るのも良いものだ」「安全対策を怠ったから起きた事故」「安全対策をしっかり施して続けてほしい」って内容ですね。
一通り書き終えてお盆が明けたその日、凄いスピードで名古屋市教育委員会から今年のトーチトワリング中止の決定が発表されました。
名古屋市の市立中学のほとんどが野外活動で取り入れている、火を付けた棒を使う演舞「トーチトワリング」(トーチ)について、本年度は実施しないよう、同市教委が十三日付で、全小中高校に通知したことが分かった。先月、学校で演舞の練習をしていた中学二年男子生徒がやけどを負ったことを受けたもの。市教委は「安全確保が第一」としている。
市教委によると、事故は先月二十六日、同市守山区の守山東中学校の運動場で発生。トーチ棒の火が男子生徒の袖に燃え移り、手首の内側からひじにかけて約二十センチのやけどを負った。近くにいた教員が手で火を消そうとしたが消えず、別の教員がバケツで水をかけて消し止めたという。
トーチは、小学五年と中学二年が学校ごとに行う野外学習の際に、希望者が披露。棒の先端に巻いたタオルに灯油を染み込ませて火を付け、棒を振り回すなどする。昨年度は市内百十の中学校のうち百九校で実施され、小学校でも二百六十一校中三十二校で行われた。本年度も同程度の数の学校で予定されており、既に半分は実施済み。市教委によると、昨年度も小五児童がやけどを負ったという。
トーチは連帯感をはぐくむことなどを目的に、少なくとも約二十年前から取り組んでいる。安全対策などについて市教委が定めたマニュアルがあり、教員の初任者研修でも指導法を学ぶという。
学校事故に詳しい名古屋大の内田良准教授によると、トーチは愛知県内の小中学校で広く行われているが、「火を付けた棒を振り回す行為を学校教育で行うのは危険」と指摘。他の自治体にも注意を促している。
2019年8月17日中日新聞朝刊より
ここで名古屋市内全域でほぼ実施されていることが明らかになります。過去にも事故があったことが少しだけ触れられてます。
この市教委の迅速な発表に、私の偽らざる感想は。
「早!このスピードすごっ!残念だけど安全確保できていない現状がわかった今の最善だなぁ」
でしたね。
ここから聞き取り調査などで状況がさらにわかってきます。次に出たニュースはこちら。
名古屋市立守山東中学校で火のついたたいまつを回す「トーチトワリング」の練習中に男子生徒がやけどを負った事故で、学校が市教育委員会のマニュアルを守っていなかった可能性が高いことがわかった。27日の市議会委員会で、市教委が学校への聞き取り調査の結果を明らかにした。
事故は7月26日に起き、2年生の男子生徒が校庭で練習中、服の袖に火がついて腕にやけどを負った。今月27日の市議会教育子ども委員会で、市教委の加賀幸一・指導室長は「マニュアルで、灯油はタオルに染み込ませた後、手で絞らなければならない。それが行われていなかったことが事故につながった最大の原因ではないかと考えている」と述べた。また、やけどを負った生徒以外にも、灯油がトーチ棒を伝って手に垂れたと証言した生徒が約10人いたことも明らかにした。ほかにも、生徒が着ていた衣服の素材を確認していなかったり、消火用のバケツがすぐ手の届く場所になかったりしたこともわかった。加賀室長は「学校の危機管理が乏しかったことは否めない。教委としても申し訳ない」と陳謝した。
市教委が事故を受けて全市立小中高校に調査したところ、やけどや火に触れるといったトーチに関する事故が2017年度は7件、18年度は16件、19年度は14件起きていたという。
2019年8月27日朝日新聞デジタルより
このニュースを読んでの私の感想は…
「あぁ、これはダメだ。状況が酷すぎる」でしたね。小中学校でのトーチトワリングがしばらくできなくなるだろうことを覚悟しました。
予想通り、トーチの余分な灯油を絞っていなかったことが事故の最大の原因。トーチ棒を伝って灯油が手に垂れたとのこと。しかもその他10人も同じ状態だったと証言。
これは終わってる。あまりに杜撰。他の生徒たちが綿100%の衣服と練習を重ねて火の先が手元に来なかったからよかったものの、他の生徒の衣服にも火がついてもおかしくない酷い状況。
「安全対策を施して是非トーチ継続を」なんて私は言いましたが、あまりに状況酷すぎて今は言えない。これはスグに安全対策が整わない。
私はその学校の指導担当の先生1人2人の取り組みの不味さ甘さが原因じゃないかと思ってニュースを見てましたが、これはどうも根が深い。
12人の指導担当の先生の中でマニュアルを読んでいた先生が1人という話。これは恐らく、キャンプに行く先生が12人だったんでしょうね。
ここは私の中でそれほど引っ掛かりはありません。トーチを12人の先生全員が指導することは無いでしょう。
指導担当の先生がマニュアルを熟知して、責任を持って一貫して指導をしていれば。マニュアルを熟知した先生は数人がベストですが、1人でも可能だと思います。
が、これが守れなかったようですね。日々の激務の中、その学年で手の空いた先生が順に指導をするような形だったのかと。
マニュアル読んでいない先生も、業後の合唱コンクール指導ぐらいの気持ちで指導をしてしまっていたのでしょう。
繰り返しますがトーチの灯油を絞らずトーチを回させるとか、あまり危険すぎて恐ろし過ぎます。どれだけ生徒を危険に晒していたことか。
今回の事故の主たる原因は生徒の練習不足じゃない。服が綿100%じゃなかったことじゃない。トーチの灯油を絞らず火をつけたからじゃない。
人手不足や業務多忙を背景にした、指導する教師たちの安全対策の不徹底ですね。残念ですが。
これは今回事故が起こった中学だけの問題じゃなくて、同じ状況である学校も沢山あるはず。
これはしばらく整わない。先生は不足してるし、先生の多忙もすぐには改善しない。そんな中で安全を確保して行うには出直しが必要だろうなと私は思いました。
名古屋市は小中学でのトーチトワリングを来年以降も行わない予定だということも発表してます。
周りの市町村がどう出るか。小さな自治体であれば、今後の安全対策とその徹底が比較的簡単かもしれませんが、大きな自治体は苦戦するでしょうか。
本来トーチ継続実施を希望していた私ですが旗色悪いです。「で、そこまでしてやる必要あるの?」のセリフにはめっぽう弱いです。
名古屋市長河村たかしも言ってましたが「いい思い出になるし、やれるとよい」ぐらいですね、やらせてあげたい理由は。
さて、こんな状況になってしまいましたが、今私が伝えたい事3つ伝えさせてください!
トーチへの見方が知ってる人と知らなかった人で180度違う!
今回の事件を受けて、ツイッターで意見している人たちのツイートを見てましたが、こう、トーチトワリングを経験している人と未経験の人とでトーチへの印象がまるで違ってて、お互い歩み寄れなさそうだなぁと感じました。
例えを考えたのですが、こんな例えが近いかなと。
クジラの食文化について、日本人と欧米人とでは捉え方がまるで違いますよね。そして歩み寄れない。生まれてから身体に染みた価値観、そうそうひっくり返らないです。
欧米人「クジラを食べるだなんて野蛮!あんなに賢くて優しい哺乳類を殺して食べるだなんて理解できない!」
日本人「いや、クジラうめぇよ?日本ではずっと昔から食べてる文化よ?牛や豚食べるのとどう違うの?一緒じゃね?」
これが歩み寄れないんですよね。
これが中国などの犬を食べる食文化となると、日本人も欧米人と同じグループに急に入ったり。
日本人「わんちゃんを食べるだなんて野蛮!あんなに賢くて優しい人間の友達を殺して食べるだなんて理解できない!」
中国人「いや、犬うめぇよ?中国ではずっと昔から食べてる文化よ?牛や豚食べるのとどう違うの?一緒じゃね?」
やっぱりここも歩み寄れなくて。
中国人のセリフに私は反論できません。それでも、犬はペットでかわいがる動物という見方しかできない私はやっぱり犬の食文化は賛同できないんですよね、心情的に。
これと同じ感じをトーチ実施の是非についてのツイートから感じるんでしょね。
トーチ知らなかった方「火を振り回す?南国のファイヤーダンスみたいに?そんな危険なことをずっと子供にさせてたとか愛知やばいわ!」
トーチ知ってる方「いや、トーチは感動的で良いよ?今まではちゃんと回せるように練習して安全対策してやってきたのよ?50年前から!」
見てる景色が違ってて。トーチを知らない方には危険で南国ポリネシアのファイヤーダンスショーという見え方でしかなく。
トーチを知ってる方にはキャンプファイヤーの儀式の一環で厳かなセレモニーという見え方で。
この見てる景色が違うので、ツイートを読む限り歩み寄れないなぁと感じます。お互いの言ってることは理解できても心情的に重ならないんだろうなと。
トーチトワリングは安全に実施できる!
トーチは正しく取り組めば安全に実施できます。私自身が中高大と何十回とトーチを回してきましたから、私はそう思っています。
安全に実施するのに大事なポイントは3点。小中学生に実施する想定で書いてみます。
1点目 しっかりと練習をする
まずはしっかりと練習をすること。本番前の着火練習も、その前に習得度を確認するテストを実施するべきです。
練習して習得出来なかった技は回させない。また、著しく習得度が低い生徒はトーチ自体回させない。そこまですべきでしょう。
今回の流れであると、今後まず保護者に「トーチ参加確認書」のようなものを書いてもらう必要出てくるかもしれませんね。
そこに、「事前習得度テストで合格できず、トーチの実施が危険であれば本番でトーチをさせません」なんて一文入れておくことですね。(トーチの服装のお願いと共に)
正直、シッカリ練習をしてもGパンやシャツをトーチで擦るような体験は私にもあります。それでも2点目3点目がしっかり実行されていればススが少しつくぐらいで済むんです。
2点目3点目書いていきます。
2点目 防火に気を配った格好を守る
着衣への着火を防ぐべくトーチの正装で行います。
頭は綿100%のバンダナを巻きます。上半身は綿100%の長袖シャツを。下半身はGパンがベストだと思いますけどね。足元も靴下を履いてスニーカーを。
この恰好が揃っていなければ教師はトーチへの点火を許してはいけません。
学校側としてバンダナや綿100%の長袖シャツを数枚ストックで持っておくといいですよね。
私はこの正装のおかげで、身体をトーチが擦った時も洗って落ちるススが付いただけで済みました。
(充分練習して技は全て習得してましたが、本番で良いところを見せようとスピードをあげて回したものだから、トーチの軌道がブレて身体を少し擦りました)
3点目 トーチの余分な灯油はしっかりと切る
今回の事故はここが守られず事故に繋がってしまいました。市教委の調査結果でも「最大の原因だ」と同じことが言われてました。
逆を言えば、多少練習不足であっても、トーチが少し身体を擦っても、トーチの灯油がしっかりと切ってあれば、着火することはありません。(恰好は万全で)
これは私の実体験から。2点目でも書いたことです。
これら3点を守れば、この3点を指導する体制が整っていれば、トーチトワリングは安全に実施できます。
反対派に怒られそうですが、経験を元に私はこう思っております。(経験盾ってちょっとズルいw)
トーチトワリングは出直す必要がある!
最後に伝えたい事です。
「トーチトワリングは安全対策を施して継続して実施してほしい」という私の意見は変わりません。
ただ、事故の状況が明らかになるに連れて、状況酷すぎて安全対策がすぐに行き届くことは無さそうだと感じてます。
怪我をさせてしまうまで緩んでしまったトーチへの安全対策を立て直すことができるまでは、しばらく小中学生のトーチは出来なくなっても仕方が無い。そう思います。
出来なくなってしまったならば、その間はトーチを回せる先生いれば是非先生が回して見せてあげてほしいです。
しっかりと立て直して、中止方針の名古屋市の小中学校でも再度取り組める日が来る日を期待します。
繰り返しますが、正しく取り組めば安全に実施できると私は思っています。そしてそこまでしてやらしてあげたいと私は思っています。
各自治体の教育委員会の皆さま、50年取り組んできた愛知の取り組み、今後二度と今回の事故のようなことが無いよう、安全に皆がやれるよう実施の方向で立て直してもらえたら嬉しいです。
現場の先生方、日々激務の中ではありますが、どうか安全最優先で取り組ませてあげてください。
高校や大学でトーチトワリングに取り組む皆さま、どうかトーチの伝統を途絶えさせぬよう引き続き安全面に配慮して実施お願いします。
(ちなみに安全にLEDでやったらなんて意見もありますが、そうなるならやらなくていいかなとまで思ってます(^^;)火を囲むキャンプファイヤーの厳かな儀式の一環だと私は感じていてるからです!)
再々度トーチトワリングについて、くどくどと好き勝手書きました。
二度とこのような事故を起こさぬよう、これから総じて良い方向に向かうといいなと思います。
今日はこのへんで。
それでは。
國立拓治
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